こころの故郷

長野県北佐久郡佐久市望月。本州のど真ん中、信州の高い山々にかこまれた里山に住む、私たちの料理の師匠「職人館」の北沢さんこと、通称北さんが足繁く通う喫茶店には公民館の様に町民が集います。専業農家のおじいさんやおばあさんに混り、無農薬の野菜を育てるたくさんの若い農家さんもやってきます。この風景こそが私たちのこころの故郷、日本の原風景といえるのではないでしょうか。

野や山、本当の宝は足元にある

北さんの営む蕎麦料理の「職人館」は、佐久望月の長閑な田園にありますが、日本全国からお客さんは集まってきます。山の女神が旬を教えてくれた春の山菜や水芹、筍。近隣の農家から分けてもらう野菜や、秋の地キノコ、薬草や木々を燻したお茶など。素材の持ち味を活かした料理に変えられて食卓にどんどん並びます。食べ終わる頃には皆、この里山暮らしの豊かさに魅せられてしまうとともに、本当の「食の豊かさ」がこの里山にあることを実感します。北さんは言います。「答えは野が教えてくれる。まずは足元の価値を大切にしねーと。野や山の女神が恵んでくれた元気なものを食べてるのが 1番のごちそう。元気な野菜に塩をふってやるだけ。俺はなんもしてねーさ」。

台所料理人・柳谷晃子と「daidokoro料理」

もうひとつdaidokoroは、日本の風土や世界の食文化のエッセンスを吸収しながら食文化を育んでいるレストランを作りたいという思いから東京・池袋でスタートしました。もともと柳谷晃子さんは、素材から知恵と工夫を織りなす料理に日頃から向き合っていました。家庭のお母さんが台所で毎日そうしている様に、「〇〇料理」という、レシピや形式に沿った、もしくは流行を追ったものの対極にある、シンプルに、素材の美味しさを引き出した優しい家庭料理。立ち上げにあたり、柳谷さんの料理のこころの師匠でもある北さんとのご縁をいただき、北さんの風土に根付いた食の原点を深く知るにつけ、私たちの思いの方向が正しいのだと、確信しました。すべて人と人との縁。こうやって「daidokoro料理」が誕生しました。

台所料理人 柳谷晃子プロフィール
1967年東京生まれ。料理上手な母親の元で育つ。学習院女子大学、国学院大学大学院卒業、民俗修士。結婚後、本格的に料理を始め、江戸懐石近茶流、エコールキュリネール等で様々な料理を学び、1997年イタリアシエナに料理留学。
自宅の台所で始めた料理教室「Akiko Academy for Culinary Culture」は今年、25年目を迎えた。
最近では「週刊朝日」へのコラム執筆や、レストランや店舗の料理アドバイザーなど、食に対する活動も多岐にわたる。もうひとつのdaidokoroの台所料理人として、料理監修全般をつとめる。
趣味はフルマラソン。また現在も、上智大学大学院神学部に在学中で「食と身体と霊性との関係」をテーマに研究を続けている。